FEATURE

 

アーティストステートメント

ところが昨年末だっただろうか、花を作品として撮影してみたいと突然に思い立った。それも何故か脳裏に浮かび上がったイメージはペットボトルに生けられた花たちだ。バカラのクリスタルの花瓶でも由緒正しき焼き物でもない。

黒い壁を背景に、捨てられたペットボトルに生けられた花のイメージだった。

花は無常。全ては一瞬もそこには留まらない。変化し続けそして消滅してゆく。ここに咲く切り花たちも。だが、ペットボトルという人工のプロダクトは行き場を失った存在だ。消費され捨てられても朽ちて消滅することはない。

花という圧倒的な美の象徴と日常に溢れ美しさなど意識することなく大量生産されるペットボトル。この二つはそれぞれが「物質」としてレンズの前では平等だ。

──蓮井幹生、本展ステートメントより抜粋。

展示作品

 

展示概要

『PEACE LAND』シリーズをはじめ、水平線の広がる風景を収めた写真作品を通して色彩や光の世界を探究し続けてきた蓮井幹生。さらに昨年の写真展「for yesterday」では、自らの家族を撮影した作品群で新境地を開拓しています。

長らく受動的な在り方で対象と対峙してきた作家は、自らの人生や家族という主題に取り組むことで、その受動性の根源に向き合いました。そうした転換を経て、今回は具体的な事物を扱う能動的な制作に取り組み、作家としての新たな地平を開拓しています。

本展「無常花」の主題は、蓮井が長年撮り続けながらも作品のモチーフにすることのなかった「花」。自然界が生み出した造形物である「花」と、大量生産された人工物である「ペットボトル」との間には、生と無生、美と機能、無常と不朽といったいくつもの対比が見出せます。しかし蓮井自身が述べるように、そんな対照的な二つの存在でさえレンズの前では等しく単なる「物の写像」として収められてしまうところに、写真というメディウムの妙味があるのでしょう。

生体から切り離された「切り花」は、ただの物質にすぎないのか。その物質性は、人工物であるペットボトルのそれと同じものだと言えるのか──。

花の持つ繊細な造形や色彩と、ペットボトルの放つ鮮明な反射光とが調和した表層の奥には、そんな問いかけが潜んでいるようにも感じられます。写真家 蓮井幹生の新境地となる作品群を、この機会にぜひともご高覧ください。

 

 

 

Mikio Hasui

写真家

1955 年生まれ

明治学院高校、同大学社会学部社会学科に入学。アートディレクター守谷猛氏に師事しデザインを学ぶ。1984 年から独学で写真を始め、1988 年の個展を機に写真家への転向。新潮社の雑誌「03」を始めとするカルチャー系エディトリアルシーンで著名人のポートレイト作品を発表し注目を集める。1990年代から撮影が続く『PEACE LAND』は作家の世界観の中核を成す作品群であり、作品集の出版を通して継続的な発表が行われ2009 年にフランス国立図書館へ収蔵される。現在は、長野を拠点に制作を行う。

【主な活動歴】
2018
企画展「Two Mountains Photography Project 3.0ILHAM クアラルンプール、マレーシア
2017
企画展「PHOTOGRAPHY NOWTHE BRICK LANE GALLERY ロンドン、イギリス
2013
IMAGINE IN THE LIGHTCOMME des GARCONS BLACK SHOP ベルリン、ドイツ
2008
PEACE LAND 2002-2007spiral 東京、日本
2002
PEACE LAND 1995-2001spiral 東京、日本

【コレクション】 
2015
東京工芸大学 写大ギャラリー「GELATIN SILVER SESSION 20072008
2010
フランス国立図書館「詠む写真」
2009
フランス国立図書館「PEACE LAND

【作家ウェブサイト】

http://www.mikiohasui.com