高屋永遠 個展 「JOY AFTER ALL - 花信風」


「Joy after all / 花信風」は、アーティスト・高屋永遠による「SAKURA」シリーズの新たな作品です。抽象的な作風や、曖昧さを孕みつつも広がる色の世界はそのままに、これまでの作品には見られなかった「線」の要素が作品のなかに織り込まれています。

線とは、事物と事物、空間と空間、色彩と色彩の境界であり、何かと何かを分離する判断でもあります。これまで曖昧さと抽象によって内省的な世界を表現してきた高屋は、本作において、「線」を通じて他者あるいは外部への働きかけを試みています。線を引くという決定的な行為に、しかしどうにかして曖昧さや複雑さを残すことができたなら──

本展では、書き下ろしの新作を含めた絵画作品約18点を展示いたします。
色と線にまつわる逡巡の成果が込められた「風」の作品群を、どうぞお楽しみください。


私の身体を通り抜ける、その気配。
一体、それはどこまで行ってきたのだろう。
元のそれとは別のものになり、
舞い戻り、また私の身体を通り抜けていく。

記憶としてさえ像を結ばない感覚の断片たち。
言葉を持たずに共鳴する色彩たち。
こだまのように響いて、やがては風に溶けていく。

拡散する数多の光と響が
いつかどこかで出会うなら

願いはやさしい束となり
絹のように軽く
皆を包み込むものであってほしい。

「SAKURA」シリーズは、「桜」が生み出す時間や空間、記憶を作品に落とし込みたいという目論見から始まりました。2022年の作品群では、「すべての個体がクローンである」というソメイヨシノの性質にインスピレーションを受けつつ、群体としての桜が持つ「個」を超えた広がりを捉えようと試みています。

その背景にあったのは、「個々の存在がいかに儚いものであるか」という実感、そしてそれを乗り越えるための平穏や生への願いです。個でもあり群でもある、その曖昧な広がりにこそ、そうした願いの場所があるのではないか。そんな思いが「SAKURA」シリーズを始める大きな動機のひとつでした。

今回の「桜」を特徴づけるのは、そうした群体としての広がりに、さらに「動き」の要素を与えるような風や光の表現です。桜の色面に満たされていた絵画空間は、その外部にいる他者や、何かが到来するその根源の場所を感じ取ることで、むしろ自身の「個」としての輪郭を見つけ出します。今の私にとって、桜のうねりを描くことは風や光、色を通じて、自らと世界を確かめ、喜びを共有することに繋がっているのです。

─高屋永遠─


【展示概要】
会期:2023年2月22日(水) - 2月28日(火) *会期中無休
会場:Lurf MUSEUM / ルーフミュージアム 1F
時間:11:00 -19:00
住所:150-0033 東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
入場:無料


「風と踊り子」
1167×910mm, 1940×1120mm, 1167×910mm
Pigments and oil on linen canvas

 
出展作品一覧

 

Tシャツ販売
高屋永遠 Lurf MUSEUMオリジナルTシャツを発売いたします。
2023年2月22日(水)11:00より店頭とLurf MUSEUMオンラインストアにてご購入いただけます。

高屋永遠(たかや・とわ)/ 画家

1992年東京都生まれ。
ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ卒業。
2022年現在、東京を拠点に活動。

流麗な線と神秘的な色彩が特徴的な絵画は、空間、時間、存在についての領域横断的な考察に基づき制作される。

Instagram: @towatakaya
公式HP:https://towatakaya.com/