活動報告

②中堅作家から若手作家への技術指導~5/20共同焼成記録レポート【第2回】焼成編

 

珠洲市陶芸センターの共用薪窯を使って実施した共同焼成。
窯元である中堅作家が集い、まだ窯を持っていない若手作家に技術指導を行う貴重な機会となりました。
全4回で構成する若手作家視点での記録レポート。2回目の今回は焼成・前編をお届けします。

【day1】

最初は低温で丸一日かけて、作品や窯じたいの湿気を全体的に抜いていきます。
この時期に薪を使うのはもったいないので製材のときにでる切端(せっぱ)や廃材などを利用しています。

日が落ちて、火を見つめていると 訥々と、でも確かな言葉が、誰からともなくこぼれてきます。
陶芸のことも、日常のことも。誰かとゆっくり話をする機会は、被災後多くはなかったように思います。

【day2】

早朝からイレギュラーが立て続けに発生。
低温の時間帯使おうと思っていた切端が少なく、早い段階で薪に手を付けたこと。
そして薪に手を付けた結果、薪束をまとめたビニール資材をはがしていなかったため
薪が蒸れて湿った状態になっていることに気付いたこと。。

とにかく薪束は天日干ししよう!と、みんなで立てて並べ、
薪の状態を考えると今はやはり切端で焚いておきたい・・・というわけで
薪当番をひとりにお願いし、数名で切端の追加搬入を行いました。
こういう作業を考えると、身体能力以外にもマニュアル免許や中型トラックの運転技術があると便利です。
イレギュラーは発生したけれど、対応できる人数がいる早い段階で気付けてよかったです。

【day3】

中段の薪口を利用した中焚きに入りました。

薪口前の棚板をはずし、薪で塞ぐように焚いていきます。
薪を投げ込む上焚きまでの、つかの間の休息。
まだ湿り気のある薪は窯のそばに積んで乾かしながらの作業でした。

強還元をかけはじめる温度帯を目安に、中焚きを終了。
中段の薪口はもう使わないのでレンガを詰めて閉じます。

上焚きの開始です。テンポよく薪を投げ入れていきます。

 温度帯1000℃あたりの窯の様子。

窯の近くは冬でも暑いので、タッグを組んで手際よく薪をくべていきます。

薪を多く投じすぎると薪自体の燃焼にばかり熱量を奪われて窯の温度が上がらなくなるので薪が燃えて次の燃料をほしがりそうな頃合いを読む、タイミングが肝要です。

※③焼成・後編につづく

①中堅作家から若手作家への技術指導~5/20共同焼成記録レポート【第1回】窯詰め編

 

珠洲市陶芸センターの共用薪窯を使って実施した共同焼成。
窯元である中堅作家が集い、まだ窯を持っていない若手作家に技術指導を行う貴重な機会となりました。
プロモーションとは一味違う、若手作家視点での記録レポートとして、全4回でお届けします。
1回目の今回は窯詰め編です。

共用薪窯はいわゆる穴窯タイプ。狭い窯の中は緩やかな階段状になっており、
窯の中にもぐり込んで棚板を組み、窯の奥から作品を並べていきます。

棚板は傾きが出ないようしっかり調整します。
窯の出入口部分にあるロストル(火格子。通風を良くし火がよく燃えるよう火を焚く場所の下部に設ける。)を点加重による負荷で壊さないよう、板を敷いて保護しています。
棚板1枚の重みは約7.5kg。狭い場所での作業は時に強い身体能力を必要とします。


こちら共用薪窯の特徴は「温度が上がりやすい」「熱が抜けていきやすい」。
窯の中で炎をどのように通して熱を蓄えていくか、指導を受けながら窯詰をします。
炎の通りを考えた時の作品の正面の捉え方や作品を詰める密度など、普段は聞けないことや再確認したいことをフランクに話せる機会にもなりました。

窯の外では最後の大物をどう置くか、新聞紙を棚板の大きさに合わせて試行錯誤。
火前の灰のかかり方や後ろにくる詰めたものとのバランスを見ながら配置を考えます。
若手は、窯詰めが終わった後の作業を見越してモルタル練り。
モルタルの柔らかさも作業効率に直結するので気は抜けません。


いよいよ大詰め。サインの位置など正面を確認しながら慎重に据え置きます。
作品が棚板にひっつかないようアルミナ粉をつけるのを忘れずに。
メインの大物の脇には、火前のためにとっておいた作品を入れていきます。
ロストル脇の空間も有効活用し、灰かぶりの窯変を狙います。

作品を詰め終わったら出入りしていた部分をレンガでふさぎます。
薪口(薪を投入する部分)の高さをチェックしながら形作っていましたが、割れそうなレンガを代用品で対応したら収まりが悪くなり、ここでも試行錯誤。
なんとか積み切り、最終的に薪口を閉じるときに必要なレンガも今のうちに寄り分けて…
朝9時半からの窯詰め作業は、夜20時半に終了。
そのまま続けて焼成開始です。

大阪万博での珠洲焼展示が産経新聞に掲載されました

 

2025年7月2日(水)〜6日(日)、大阪・関西万博会場 EXPOMesse「WASSE」にて開催された企画展『やさしいくろとたゆたうあお』が、産経新聞(2025年8月1日付)に掲載されました。

本展は「日本国際芸術祭」の一環として実施され、能登半島地震で被災した石川県珠洲市の伝統工芸「珠洲焼」の作家たちによる共同焼成作品約260点が出展されました。

産経新聞の記事では、展示作品の多様性や作家たちの想い、そして本プロジェクトが目指す「珠洲焼を“関わり”から再興する」構想が丁寧に紹介されています。

▶︎ 産経新聞記事リンク:関わりから目指す「珠洲焼」再興

大阪・関西万博での展示、無事終了しました

大阪・関西万博での展示、無事終了しました

 

 

2025年7月2日から5日間にわたり出展していた、第3回日本国際芸術祭(@大阪・関西万博会場)での展示が無事終了しました。

今回、私たちは「やさしいくろとたゆたうあお」というテーマのもと、現代美術家・高屋永遠さんと珠洲焼作家たちによる合同展示を行いました。

初日から最終日まで、会場には多くの方にお越しいただき、「珠洲焼のことを初めて知った」、「応援しています、頑張って下さい」といった声をたくさん頂きました。

来場者の声(一部)

「珠洲市の名前は地震で知っていたけど、焼き物があるとは知らなかった」

「それぞれの作家さんが工夫を凝らされるのがわかりました。能登を応援したい」

「派手なものが得意でないので、余計な柄などの主張がなくてよい」

「作家さんとお話するシーンがあったので、かっこいい以上の魅力に触れることができてよかった」

「珠洲焼が好きです。会場で珠洲焼を見られて、泣きそう。作家さんも頑張って欲しい」


こうした励ましの言葉やリアクションに、強く背中を押されている思いでした。

メディア掲載も多数

ありがたいことに、複数のメディアに取材・掲載いただきました。

石川珠洲の伝統工芸品「珠洲焼」 日本国際芸術祭に出展へ(NHK)

珠洲焼の魅力を万博から世界へ復興後に押し出しに260点を展示販売(新聞)


その他テレビ・ウェブメディアでも紹介していただき、珠洲焼への関心の広がりを実感しています。

お知らせをお礼

 

ご来場くださった皆さま、取材いただいたメディアの皆さま、そしてこのプロジェクトを支えてくれたすべての方々に、心より感謝申し上げます。

この展示を通して出会えた言葉や視点を、これからの制作や活動にしっかりつなげていきます。