珠洲焼応援プロジェクト
私たちは、度重なる自然災害で被災した珠洲焼作家の創作環境の回復を支援し、
珠洲焼の魅力を広め、作家とファンをつなぐ活動を通じて、伝統工芸の未来を共に築いていきます。
「やさしいくろと たゆたうあお」
能登はどこか不思議なところです。陽のおちる夕暮れ、ところどころ灯かりがつき始めたまちに佇むとき、ここは一体どこなのか今は一体いつなのか、ふと自分の周りだけが切り離されたような感覚に包まれることがあります。北前舟で賑わったころ、いやそれより遙か昔の影に突然出逢ってしまった、そんな頼りなさと懐かしさが心の中に流れてきます。
パチパチパチ 薪のはねる音がします。 青い夜に窯を焚く火が踊っています。炎を囲んで酒を酌み交わしながら笑う人の声が聴こえてきます。その声に誘われていつの間にか輪の中にいます。窯の中には、珠洲の地から目覚め、慈しむように形をおびた土が輝いています。「能登はやさしや土までも」、そのようにしてこの地は暮らしてきたのです。
あの日からもうすぐ一年になります。家や工房、窯を失くし、どうしたら再び創作が開始できるか全く検討もつかない状況の中から、心を整えて空を見上げ、深呼吸しながら、少しづつ進んでいます。その日々から、今ここにある作品が集いました。
この展示では 被災を免れた作品 復興した窯で新たに焼成した作品 100点を超える珠洲焼が並びます。珠洲焼の中核を担う作家と昨年から一緒に展示をしてきた若手の作家。石川県外でこれだけの作家の作品が集まるのは本展示がはじめてになります。そして、珠洲の復興を願い珠洲にゆかりのある作家が創作したアート作品が珠洲へとの思いを繋げています。
珠洲焼に触れ、珠洲の地を表現した作品に囲まれて、厳しい中でも自然と向き合って生きている珠洲の地と暮らす人々に心を寄せてください。私たちの奥にある、忘れかけている大切な何かが、優しく語りかけてくれるはずです。
WHYNOT.TOKYO 運営代表 高屋典子
珠洲焼とは?
珠洲焼は、平安時代にその歴史を遡る、日本の伝統的な焼き物です。かつては日本海側を中心に広く流通し、北海道までその存在が知られていました。しかし、室町時代には忽然と途絶え、「幻の古窯」として長い間人々に知られることはありませんでした。
昭和30年代以降、珠洲一帯で約40基もの珠洲焼窯跡が発掘され、この貴重な文化を復活させようとする熱意が高まりました。そして1976年、珠洲市が400年ぶりの再興を決定。陶芸センターを拠点に数名の作家たちが復活に取り組み、珠洲焼は再び歴史の舞台に姿を現しました。その後、研修制度が設けられ、1989年には石川県の伝統的工芸品に指定されました。現在では、多くの作家が珠洲焼を手掛け、その魅力を国内外に広めています。
珠洲焼の特徴のひとつは、その深い黒色です。高温焼成後に行われる「くすべ焼き」という独特の技法により、炎が土から酸素を奪うことでこの黒が生まれます。この黒色は、珠洲焼を象徴する美しさであり、他の焼き物にはない独自の魅力です。
珠洲焼のもうひとつの大きな特徴は、全工程を作家自身が手掛ける点にあります。土を探すところから始まり、煉り、ろくろや手ひねり、型打ちといった成形、さらに焼成まで、すべてのプロセスに作家の手が加わります。この丁寧な手仕事は、珠洲焼に独自の個性と温かみを与えています。
こうした作家の手仕事に加え、珠洲焼の魅力を際立たせるのが自然との対話です。薪や自然釉の変化を活かした焼成方法では、窯の中で起こる偶然の作用が作品に表情を加えます。その結果、同じ作品が2つと生まれることはありません。また、珠洲の土を使用し、灰黒色と自然釉のみという制限がある中で、作家たちはそれぞれの個性を活かした作品を作り続けています。この制約こそが作家の創造性を引き出し、珠洲焼ならではの芸術性を高めているのです。
画像出典:珠洲焼公式ウェブサイト
珠洲市の被害状況
石川県の奥能登に位置する珠洲市は、ここ数年、大規模な自然災害に繰り返し見舞われ、甚大な被害を受けています。2022年から2024年にかけて、珠洲市では3年連続で大きな地震が発生し、2022年には震度6弱、2023年には震度6強、そして2024年には震度7を観測しました。これらの地震により、多くの建物が全壊・半壊し、道路の損壊や停電なども発生。住民は復旧途中で再び被害を受けるなど、困難な状況が続いています。
また、2024年1月の地震では、石川県全体で全壊8,027棟、半壊13,668棟、一部破損59,997棟の建物被害が報告されています。珠洲市を含む被災地域は災害救助法の適用を受け、激甚災害にも指定されました。この地震に伴う経済的損失は甚大で、復旧に向けた公費解体の申請は石川県全体で4671件にのぼるものの、2024年7月時点で完了しているのはわずか350件、進捗率は7%にとどまっています。度重なる災害により、地域コミュニティの維持も困難となり、特に高齢化が進む地域では復旧作業の担い手不足が深刻な問題となっています。
さらに、2024年9月には記録的な豪雨が市を襲い、河川の氾濫や土砂災害が多発しました。この豪雨によって15名が命を落とし、特に土砂災害の危険が高まった地域では長期間の避難が必要となっています。2024年9月時点で、避難が長期化している地域もあり、住民の生活再建が大きな課題となっています。これらの災害により、市内のインフラにも大きなダメージが及び、復旧が遅れる一因にもなっています。
珠洲焼の被害状況
珠洲市を襲った群発地震、とりわけ令和6年奥能登地震は珠洲焼作家の生活と作家活動に甚大な被害をもたらしました。自宅も工房も窯も損壊し、生活基盤を失う深刻な被害を受けています。1979年に約500年の長い眠りから目覚めた珠洲焼は、全国的な伝統工芸の後継者不足が叫ばれる中でも発展を続けていました。移住者を中心とした若い陶工が増え、22基の窯が稼働し、新たな魅力を創出していたのです。しかし、相次ぐ地震と豪雨により、この発展は足踏み状態となり、廃業者も出はじめ存続が危ぶまれています。
珠洲焼の窯元は22基ありますが、そのほとんどが災害による被害を受けており、復旧が困難な状態です。令和5年の地震から再建したばかりの窯が再び倒壊したケースも多く、一部の作家は窯の修復を断念せざるを得ない状況に追い込まれています。また、揺れによって完成品や制作途中の作品が広範囲で破損し、個展用に準備されていた作品も大量に失われました。経済的な損失に加えて、再建のたびに被災するという絶望感が作家に重くのしかかり、精神的な負担も非常に大きなものとなっています。
さらに、2024年9月には記録的な豪雨が珠洲市を襲い、土砂災害が発生して被害は拡大しました。里山の工麓の工房や窯場には土砂が流れ込み、浸水によってろくろや作業道具も壊れ、保管されていた貴重な材料までもが泥水に浸かってしまいました。また、豪雨によって道が陥没し、窯や工房までたどり着けないケースも発生しています。このため、工房を移転しなければならない状況もあり、珠洲焼の伝統的な生産環境が根本から破壊されつつあります。
珠洲焼は、地域の文化や歴史を象徴する重要な伝統工芸であり、その存続は地域の文化的基盤にも大きな意味を持ちます。しかし今、このままでは珠洲焼は再び消滅の危機に瀕しており、地域の人々とともに未来へとつなげるための支援が強く求められています。
どうして応援するのが珠洲焼なのか
気候変動、信じるもの、様々な差異から世界中で命が脅かされている今日、「なぜ珠洲なのか」と聞かれます。珠洲は奥能登国際芸術祭で訪れていたまちでした。そこに関わる地元の皆さんの優しさが好きでした。そして珠洲焼がありました。訪れたことがある、友達がいる、何か行動するとき、そのきっかけは そんなささやかな出来事だけでもいいのだと思います。小さな出会いの重なりによって 私たちの役割が生まれた そんな説明が相応しいかもしれません。
珠洲の復興はまだ何も始まっていません。これから多くの人の力が必要です。珠洲焼やアート作品を通して 一人でも多くの人に心を寄せていただくこと、力を貸していただける人を繋げていくことが、いま私たちにできることだと考えています。
本プロジェクトで実現したいこと
珠洲焼の魅力と作家性の訴求、ファン形成につながる広報・展示の企画と運営
古窯でありながら、室町時代に途絶え再興した珠洲焼は、備前・越前などの古窯と比べ、認知度も低く、製法が作り出す独自の魅力も訴求できていません。また珠洲焼の伝統を守りつつそれぞれの作家が発展させた作家性も石川県外では、ほとんど知られていません。創作環境を復旧するだけでなく、作品を待ってくれるファンを増やすことも復興のための両輪と考え、展示やアーティストトークの企画運営を行なっていきます。
具体的活動内容と支援方法
珠洲焼の魅力の発信と支援者の拡大
応援展示の企画
珠洲焼をより多くの方々に知っていただき、直接ご覧いただく機会を提供します。作品の魅力を広めるとともに、作家の販路拡大や新たなファンの獲得を目指します。
アーティストトーク等イベントの開催
珠洲焼を広めるため、トークイベントやレセプションを開催します。作品の背景や魅力を伝えると同時に、発災後1年の取り組みや今後の計画を報告する場を設けます。
復旧ボランティアの募集
被災した工房や窯場の片付け作業、材料の運搬など、復旧に向けた現地活動をお手伝いいただけるボランティアを募集しています。また、情報発信のサポートやイベント運営の手伝いなど、現地以外での活動も含め、幅広くご協力いただける方を募集しています。
募金集め
珠洲焼の窯や工房の復興、作家たちの創作環境を整えるため、募金活動を行います。支援いただいた資金は、窯の修復や必要な設備の補充、被災した作家の活動再開を支えるために活用します。
SNSや各種媒体での発信
珠洲焼の魅力や作家の取り組み、プロジェクトの進捗をSNSやウェブ媒体で積極的に発信します。写真や動画を通じて視覚的に魅力を伝え、国内外の支援者とのつながりを深めることを目指します。
今後の活動予定
応援展示
Spiral Xmas Market 2024
内容|珠洲焼とアート作品の展示販売
会期|2024年12月20日〜25日
開催時間|12月20日 17:00-20:00, 12月21日 11:00-20:00, 12月22-25日 11:00-19:00
場所|Spiral Garden (Spiral 1F) 東京都港区南青山5-6-23
京都蔦屋書店
内容|珠洲焼の展示販売
会期|2025年1月7日〜1月31日
開催時間|10:00-20:00
場所|京都蔦屋書店
アーティストトーク等イベントの開催
「地震日記」朗読会
日時|2024年12月16日(月)19:00-21:00
朗読者|鹿野桃香
聞き手|河内愛
場所|東京(祐天寺コミュニティセンター UCC)
※事前登録制(こちらから登録)
アーティストトーク・パネルディスカッション
日時|2024年12月21日(土)15:00-17:00
場所|東京(La Salle F)
東京都渋谷区広尾5-19-8 F1ビル3階
登壇者|宮脇まゆみ、清水武徳(珠洲焼作家)
ゲスト|ロバート・キャンベル(日本文学研究者)
※事前登録制(こちらから登録)
鹿野桃香「地震日記」朗読×珠洲焼を続けるふたりの女性作家
日時|2025年1月7日(火)18:00-20:00
朗読者|鹿野桃香
話し手|珠洲焼作家 芝雪、林春香
場所|京都 蔦屋書店
京都府京都市下京区四条通寺町東入二丁目御旅町35 京都髙島屋S.C.[T8]5・6階
※事前登録制(こちらから登録)
アーティストトーク・パネルディスカッション
日時|2025年2月頃
場所|東京(調整中)
募金や寄付で応援
珠洲焼の窯や工房の復興、作家たちの活動環境を支えるため、義援金を受け付けております。義援金で行った修復等の様子は、メールで定期的にご報告致します。御礼にポストカードプレゼント中 。
・珠洲焼応援ポストカード
金融機関名:PayPay銀行
支店名:ビジネス営業部(005)
口座番号:普通 6067601
口座名義:カ)コンパス
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